ベテランの作業を聞き取って、手順書にする
ベテランの頭の中にある作業の手順を、録音とAIで手順書の下書きにし、現場で仕上げるまでの進め方です。
この記事で分かること
- 聞き取りで押さえる質問
- 下書きを現場で直すときの見方
「あの作業は、あの人にしかわからない」という仕事は、どの会社にもあります。手順書を作ろうとしても、ベテランは忙しく、書くのも得意ではないことが多いものです。書いてもらっても、本人にとって当たり前のことは抜けてしまいます。
そこで、ベテランには「話してもらう」だけにして、文字に起こして手順書の形に整えるところをAIに任せます。この記事では、聞き取りから手順書の下書き、現場での仕上げまでの進め方をまとめます。
作業を話してもらう
聞き取りの準備
- 1回で1つの作業にしぼる 「段取り替え」「出荷前の検品」のように、始まりと終わりがはっきりした作業を1つ選びます
- できれば作業の場で聞く 機械や道具の前で、実際に手を動かしながら話してもらうと、抜けが少なくなります
- 録音する スマートフォンの録音で十分です。始める前に、録音して手順書に使うことを本人に伝えておきます
- 時間は30分ほどまでにする 長くなると話が散らばります。足りなければ日を分けます
聞き取りで押さえる質問
ベテランに「手順を教えてください」とだけ聞くと、大まかな流れしか出てきません。次のような質問で、細かい所を引き出します。
- 始める前に、何を準備しますか。どこにありますか
- 最初に何をしますか。次は何をしますか
- それが「できた」と、どうやって判断していますか(音、見た目、手ざわり、数値など)
- 新人がよく間違える所はどこですか
- うまくいかないときは、どうしますか。誰に知らせますか
- やってはいけないこと、危ないことは何ですか
- 季節や材料、機械によって変えていることはありますか
とくに「どうやって判断しているか」と「間違えやすい所」は、ベテランが言葉にしていない知恵が詰まっている所です。答えが短くても、「たとえば?」と一歩だけ掘り下げて聞きます。
手順書の下書きにする
録音を文字にする
録音を、文字起こしの機能で文章にします。法人向けのAIツールや、会議の録音を文字にする機能が使えます。言いよどみや話の脱線はそのままで構いません。整えるのは次の段階でAIに任せます。
AIに手順書の形に整えさせる
文字起こしをAIに渡し、決まった形の手順書にするよう指示します。会社で手順書の形を1つ決めておくと、作業が増えても読みやすくそろいます。
次の文字起こしは、ベテランの社員に「○○の作業」の手順を話してもらったものです。
これをもとに、新人が読んで作業できる手順書の下書きを作ってください。
形:
1. 作業の目的(1〜2文)
2. 準備するもの
3. 手順(番号つき。1つの番号に1つの動作)
4. 各手順の「できた」の目安
5. 間違えやすい所と注意
6. 困ったときの連絡先
決まり:
・話に出てこないことは書かず、足りない所は「[要確認:○○]」と書いてください
・専門用語は、そのまま使い、かっこで短い説明をつけてください
「話に出てこないことは書かない」「足りない所は[要確認]と書く」を必ず入れます。AIは、手順書らしく見せるために、それらしい手順を足してしまうことがあるためです。[要確認]の所が、次の聞き直しの材料になります。
下書きを現場で直すときの見方
AIが作ったのは、あくまで下書きです。現場で仕上げて、はじめて使える手順書になります。
- ベテラン本人に読んでもらう 間違いと[要確認]の所を直してもらいます。ゼロから書くより、直すほうがずっと楽なので、協力も得やすくなります
- 作業に慣れていない人に、手順書だけで試してもらう つまずいた所が、説明の足りない所です。写真や図が必要な所もここでわかります
- 写真を足す 「この位置まで」「この向きで」のように、言葉で伝えにくい所は、スマートフォンで撮った写真を添えます
- 日付と担当者を書いて、置き場所を決める 手順書は、作業の変更に合わせて直していくものです。誰がいつ直したかがわかるようにしておきます
現場で直すときは、次の点を見ます。
- 1つの番号に、動作が2つ以上入っていないか
- 「適量」「しっかり」のような、人によって変わる言葉が残っていないか
- 安全にかかわる注意が、手順の前に書いてあるか
- ベテランの判断の目安(音・見た目・数値)が書けているか
進めるときの注意
- 聞き取りは「評価」ではないと伝える 録音されると身構える人もいます。「あなたのやり方を残したい」という目的を、はじめに伝えます
- 社外秘の情報の扱いを決めておく 製造の条件や取引先の名前が話に出ることがあります。入力した内容が学習に使われない、法人向けのプランや設定で使います
- 一度に全部を作ろうとしない よく使う作業、ベテランが休むと困る作業から、1つずつ作ります
手順書づくりは、AIに「書く手間」を任せることで、ベテランの時間をあまり取らずに進められます。まずは1つの作業を、30分の聞き取りから始めてみてください。